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「確かに、ここは天国じゃないわ。少しでも現世に心残りがあると、さっきみたいに闇に呑まれてしまう…」
神様は言った。
と、同時に表情が寂しげに歪んだのがわかった。
しかし、それを振り払うようにして神様は続けた。
「でもほら、見えるでしょ」
神様が見上げた先には、いつの間にか一面白で塗られた大きな建物がそびえたっていた。
「さぁ、行って」
その時、
とん、と背中を押された。
「神様は、どうするんですか?」
振り返って僕は聞く。
「私の仕事は君を天国へつれて行くこと。だからここで役目は終わったわけ」
「この先には何が…」
「行けばわかるわ。
幸運を祈ってる。
あなたならもう大丈夫…」
「ちょっと待って、ホントに最後の質問させて。
あなたは神様ではないんでしょ?」
「さぁ、どうかしら。
あ、早くしないと天国が遠ざかっちゃう」
僕は神様の言葉に急かされて、歩き出した。
振り返った時、神様の姿はなかった。
僕は少しだけ切なさをおぼえていた。
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