1.天国…?

14/14
前へ
/35ページ
次へ
「確かに、ここは天国じゃないわ。少しでも現世に心残りがあると、さっきみたいに闇に呑まれてしまう…」 神様は言った。 と、同時に表情が寂しげに歪んだのがわかった。 しかし、それを振り払うようにして神様は続けた。 「でもほら、見えるでしょ」 神様が見上げた先には、いつの間にか一面白で塗られた大きな建物がそびえたっていた。 「さぁ、行って」 その時、 とん、と背中を押された。 「神様は、どうするんですか?」 振り返って僕は聞く。 「私の仕事は君を天国へつれて行くこと。だからここで役目は終わったわけ」 「この先には何が…」 「行けばわかるわ。 幸運を祈ってる。 あなたならもう大丈夫…」 「ちょっと待って、ホントに最後の質問させて。 あなたは神様ではないんでしょ?」 「さぁ、どうかしら。 あ、早くしないと天国が遠ざかっちゃう」 僕は神様の言葉に急かされて、歩き出した。 振り返った時、神様の姿はなかった。 僕は少しだけ切なさをおぼえていた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加