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※※※
――突如ぐわんと天井が見えたかと思えば今度は背後の壁。
目まぐるしい視界の変化に一瞬、ぼくに身体を預けきっていた彼がまたぶっ倒れでもしたのでは、と酷く焦った。その痩身を受け止めようと全体重を掛けて踏ん張った腰だが、ぎゅっ、と音が鳴りそうな程の力で引き寄せられる。あまりに強くしがみついてくるもんだから均衡は取れなくなって体勢を崩し、前後左右、幾度か派手にぐらついた後二人同時に冷たい床に沈んで、落ち着いた。
「…だっ、大丈夫か?」
おい、手を差し伸べようとして、既(すんで)の所で躊躇ってしまった。
病的なまでに血の気の無い造り物の様な蒼白い頬の全体に同じぐらい不気味に青白い月光を受けながら。
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