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……ぱたり、ぱたり。
虹彩の薄い澄んだ茶色の眸を彷徨せる素振りも無くこちらを見据えたまま、意思の失せた無表情の中で唯一それだけがひくひくと引きつって動く瞼からただ狂った様に透明な雫を溢れさせている。
「…ちょっと……、」
どうしたの、と無理矢理に速水を抱き締める。…知り合ってからというもの、どうしてだか、この子のこの妙な泣き姿は他人のそれよりもずっとずっと痛々しくて苦しげで見ていられない。きっと生来の不器用故、人一倍傷付きやすいくせに哀しい時はどんな顔でいれば良いのかが解らないらしい。
※※※
柔らかい猫っ毛を手櫛で、壊れ物を扱うみたいにといてやる。心地好さに甘えてきたと思ったら、
「………なぁ」
「俺さ、」
「――――――、」
耳許で、涙混じりに艶っぽく囁かれた。
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