愛を歌えば

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晃の行きつけの店は、公園を抜けて、 長い階段を降りて、坂を下った場所に ひっそりと建つ木造の小さな小屋。 からんからん 「いらっしゃい。」 背を丸めたお婆さんが、くしゃりとした 笑顔で迎えてくれる。 「今忍はいますか?」 「はいはい。忍ね、ちょっと待ってね。」 そう言ってまた奥の部屋へ、私は晃と 手を繋ぎゆっくり辺りを見渡すと、 アンティークに揃えられた落ち着いた 内装に、独特なデザインのシルバー、 プラチナのアクセの他にも、ガラスの 置物、皮の財布とか、とにかくいろんな 物がおいてあった。 「お待たせしました、いらっしゃい。 ゛なないろ゛にようこそ。 今日はどういった物をお探しですか?」 奥の部屋から出てきたのは、凄く綺麗な 目をした9歳ぐらいね女の子で、 「頼んでいた物をもらいにきた。」 「お名前は」 「城川晃。」 「かしこまりました。 少しおまちください。」 ぺこっと挨拶をして棚をあさる。 「見てきていいぞ。」 「うん。」 手を離しゆっくり歩いて、気になれば 1つ1つ手に取り、眺めた。 いろいろ目を引く物があって、迷う。 ピアス、イヤリング、ネックレス、あ、 このブレスレットも可愛い。 「これ...」 それは一目惚れだった。 「晃、これがほしい。」 小さな石のついた十字架をモチーフの 指輪を手に取り小指にはめた。 「指輪はだめだ、」 「スキャンダルになっても大丈夫だよ。 自分で買ったって言うし。」 しばらく考え込んだ後ため息、 「分かった、約束守れよ。」 「やった〓」 レジに持っていきお婆さんに渡す。 「えっと..ちょっと待ってな...」 値札の番号をレジに打ち込む、 「合計で10万とんで 530円になりました。」 た...高すぎだ... これじゃ私...払えない... あたふたする私の頭をポンポンと置いて 「じゃこれで」 「はいよ。」 顔色一つ変えずに会計をすませ、指輪を チェーンに通し、つけてくれた。 「あ、ありがとう。」 「よく似合ってるよ。 じゃまたよろしく。」 照れる私の手を繋ぎ晃が挨拶をした。 「はい。またお願いします。」 からんからんっ 胸元に光る指輪。 買ってくれたのはが以外だっただけに、 嬉しくて眺めながら歩いた。 「あっ」 ぐぅ〓 腕時計を見ると13時が回っていた。 「この先のレストランまで我慢な。」 「うん。」 私は照れながら晃の手を取り走り出した。
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