愛を歌えば

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次の日、現場では優希さんの 台詞取りが行われた。 遠くを見つめている彼女。 何度も違うパターンをやれど、 嫌な顔をせず、逃げ出さず、 瑞希さんとよく話し合いながら 撮影は進んだ。 これがプロなんだ。 私もあんな風に気持ちの切り替えが できたらいいのに…。 「やっぱり天使役やりたかった?」 美里さんが声をかけてくる。 「ううん、私にはこんな演技無理。」 「どうして?」 「優希さんの演技見てたら… こんな人に想われて幸せだなって 本当に思えるもん。」 見つめている先に…どうか… 圭吾がいないことを…何故だろう… 願わずにはいられなかった。 「龍平は悪い虫じゃないけど… できるなら晃とか圭吾とかが 私としては良かったんだけどね。」 「圭吾は駄目!!!!!」 思わず叫んだ。 一斉にこちらを見られて、 みんなの視線がいたい…。 「僕がなんだって?」 休憩していた圭吾が来てしまった。 「あ…っ。」 「あ?」 「晃が恋人役だから、 いい感じだなぁ〓って言う話。」 「それは当て付けかな…?ん?」 ほっぺを引っ張る圭吾は笑ってるけど ちょっぴり怒ってて… 「ほへんなはい…。(ごめんなさい…。)」 「言われなくても…分かってるんだ…。」 寂しそうに呟く圭吾。 手を離すと優希さんを見ている。 本当に想ってるんだね…。 「いつか届くといいね。」 「そうなれば嬉しいけど、 越えなきゃいけない壁が 2つぐらいあるからね…。」 そう言って苦笑するから、 今さら゛うまくいくよ。゛とか お世辞でも言えなかった。
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