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「忘れないで私はずっと…
貴方の幸せを祈ってるよ。」
優希さんの台詞と笑顔を最後に
曲が幕を下ろす。
瑞希さんが一番気持ちを入れた場面。
息を飲むほど綺麗な彼女を誰もが
見とれる、女である私もまたしかり。
「カット!!!優希休憩!!!!!」
「はい、ありがとうございました。」
「お疲れ様。」
休憩に入る優希さんに沢山の
スタッフさんがお茶やお菓子を出す。
私にはそんなことしないくせに…。
って思うけど、これもまた実力の差…。
まぁ…七光り持ってるらしいし、
これもまた仕方ないと言うのかな…。
「次!!夜空を見上げるカットと
高台から町並みを見下ろして、
アップで1人2カットずつ撮るよ!!
まずは晃入って。」
「はい。」
「ねぇ、瑞希さん、私の出番まで
どれぐらいありそう?」
「30分ぐらいだと思うけど、
どうした?暇か?」
「ううん、歌の練習したいから。」
「なら優希つれていきなよ。
ハモってくれるよ。」
「でも今休憩入ったばっかりだし。」
「やるやる!!歌えるならやる!!!」
瑞希さんがマイクで私と話、
スピーカーを通じて聞いていた
優希さんは急いでお菓子を食べてから
こっちに来てくれた。
「大丈夫ですか?」
「ん…なんとか。」
「じゃお願いできるかな?」
「もちろん、じゃ隅の方でやろうか。」
「お願いします。」
一応頭を下げた。
「こちらこそ。」
笑顔で私の手を引く優希さん、
何となく姉さんって言う感じがした。
「優希さんはなんであんなに歌や
演技ができるの?」
「ん…今回の歌なら、私の場合は……
そうだな…みんなの前で一度
いなくなってるからかな……。
たくさん愛してくれた人達をおいて
いなくなって、それで死んじゃって…
月に座ってみんなを見つけることが
できたとしたら……。
私はきっと思い出の曲を歌って、
涙を脱ぐって、幸せになってと
何がなんでも歌い続けると思う。」
寂しそうな優希さんはこっちを見て
微笑んだ。
「死ぬって簡単なことじゃない。
何度も死にそうになっても、
この世界にはたくさんの人がいて
ちっぽけな私を見つけて助けてくれる。
そんな奇跡を感じながら歌えたなら
きっと歌は生きてくると思うよ。」
生きてる歌…。
そんなこと考えもしなかった。
「じゃ練習しよっか。」
「うん…。」
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