はじまりのうた

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顔出しはNG。 私はまだ中学生で余計な詮索は嫌だし、 学校側に迷惑をかけたくなくてそんな ルールを作った。 普通の歌手がデビューしたならば テレビに出たり、イベントしたり、 インタビューしたり、忙しいだろう。 だけど私達はそのすべての時間を 練習やライブにあてた。 もっと力がほしい。 泣いている人すべての人を笑顔にできる ような歌を書きたい。 けして自己満足で歌うのではなくて、 聞いてくれる人がまた聞きたいと、 カラオケでも歌いたいと思ってくれる ような歌を…… 「今日はみんなありがとう!!」 無事にライブも終え、 熱気に包まれまま帰宅する私達。 圭吾の家で打ち上げを兼ねてクリスマス パーティーして、大人はシャンパンを、 私はジュースを飲んで、卓のマジックを 見ながら楽しく夜は深まっていった。 「優希、先お風呂入りなさい。 私達は片付けあるから。」 「えっ、私も手伝うよ。」 飲みっぱなし、食べっぱなしで部屋が 散らかり放題のに見かねて、御開きに して片付け始める美里。 「いいの、こんなのはベテランに 任せておけばいいのよ。 たまにはゆっくりお風呂に浸かって 疲れをとってきなさい」 「ん……分かった、ありがとう。」 自分の部屋にと右奥を模様替えして くれた圭吾。勿論着替えや衣装も 化粧品さえ揃えられていた。 真っ白い部屋の壁紙に蝋燭に見立てた 小さなシャンデリアに洋服ダンスに 机……、とてもじゃないが遠慮なく 使える品物ではないし、いまだに 慣れない。 嬉しいと思う反面、何かで返せないかと クリスマスプレゼントを渡したけど、 そんな高価な物じゃない。 「あげたのに貰ってたら返した事にならないよね……」 タンスから着替えを取り出して 急いでお風呂に向かい服を脱ぐ。 がらっ ぱたん すりガラスに囲まれたお風呂は 街の明かりをより綺麗に写し出す。 それはまさに25階のマンション ならではの贅沢。 「君の涙をぬぐえる存在に~」 口ずさみながら髪や身体を洗い、 バンドで髪を束ねてから 湯船に沈めてのんびり目を閉じる… 私のなかでは今日の熱気は まだ冷めてない。 嬉しくて、 楽しくて、 思わず涙したライブ。 まだ歌い足りない、明日が待ち遠しい。 こんな気持ちは初めてだった。
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