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「ただいま。
あら、いい物食べてるじゃない。」
「おっほんまや、これ俺らの分もある?」
「おかえり。もちろんあるよ。
今出してくるから座ってて。」
キッチンに行く圭吾。
ビニール袋を渡し、急いで座り
デザートを待つ美里と卓。
隣にはバクバク食べる晃。
私はみんなを家族だと思っている。
血の繋がりはない、
でも音楽で繋がっている。
兄弟のいなかった私にできた
三回目の大好きな家族。
「できたよ、どうぞ。」
「いただきます。」
何気ない光景、そこに生まれる絆。
今度こそ守ると決めた。
「あら、もうこんな時間……
圭吾ごちそうさま。」
「ごちそうさん、美味しかったで。」
気づけば時計は23時を差し、
美里と卓は身支度を始める。
「また明日ね。」
「うん!!明日朝10時にここ集合ね。」
手をふりながら2人を見送った。
それからは圭吾は片付け、
晃はソファーに座りギターの練習、
私は晃の隣で寝転がりながら
ギターの音色を聞いていた。
「上手くなったね。
今じゃ私より実力ついたでしょ。」
「当たり前だ、練習量が違う。」
始めは私が先生だった。
絵描きだった晃は楽器を触ったことが
なくて、ギクシャクしていた。
今じゃ逆に私が教わってるくらい
努力と練習をかかさず毎日最低1時間、
本当に頭が下がる。
「晃、珈琲煎れたよ。」
「サンキュ。」
「優希には野菜ジュース。」
「ありがとう。」
キッチンから戻ってきた圭吾は
飲み物を机におき、ベースを握った。
「前に作ったフレーズ練習してる?」
「あぁ。」
「じゃ今から弾くから、優希はそれに
似合った歌詞書いてよ。」
「いいよ。」
自分用に用意された部屋から適当に
ペンやらノートを持ち出して、
2人の間に座ってから目を閉じた。
「じゃいくよ、1、2、3、4…」
極限まで耳を研ぎ澄ませて、
頭のなかでドラムとピアノをあわせる。
テンポが速く、早口になりながらも
願いを言える場面が3ヶ所。
サビはギターが強調されていて、
間奏はピアノのソロをいれて、
そのあとは静かめに…ピアノとドラム
だけで、一気に膨れさせる……
「どう書けそう?」
演奏が終わった。
「もちろん、さっきのもう一回頭から、
晃ピアノ貸して。」
「どうぞ。」
窓際においてあるピアノの前に座り
蓋を開けて鍵盤を一通り弾く。
「準備できたよ。」
「いつでもどうぞ。」
「では。」
ピアノから弾き初めて、
合図を出して二人を導く。
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