波風がつれてきた出会い

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あの頃の僕達も、君が寝れない日には 朝まで歌い、寄り添って眠った。 そんな日々ですら君にとっては、もう、 ただの思い出にしかすぎないのか? 僕と一緒にいれなかった間、君は何を 思い、苦しみに捕らわれた時、君は、 誰の助けを待っていたの? 「じゃおやすみ。」 「おやすみなさい。」 ぱたん なんかあっなく見つかった君は あの頃と変わらず 誰かの温もりを求めていた。 「いたのか?」 「龍平君の部屋にいた。」 だけど、その隣に僕はいない。 家族は永遠の絆だと笑った君は、 永遠よりも、始まれば必ず終わりの来る 絆に縋ってしまったんだね。 「なんだよ人騒がせな」 「そうだね。」 それが悪いことだとは言わない。 でも願わくば、その笑顔、その絆を 僕に向けて、僕と繋いでほしかった。 君を捜し、見つからなくて、 諦めてしまったあの日――― もう二度とあの頃には戻れないと 忘れることを選んだはずなのに、 「自分に自信を持て」 晃が柄にもなく優しく言うから、 諦めない、絆が続く道を... 探したくなってしまった。 「分かってる。」 願い続ければ、いつか願いが叶うなら、 もう二度と手を離さないと誓うから、 どうかもう一度だけ――― 彼女の笑顔を僕にください。 「晃、ありがとう。」 「なにがだ?」 「さっき話してた時、優希とこれ以上 離れたくないって思って、気づいたら 口から出た誰の了解も得ていない話に、 話を合わせてくれた上、マネージャーに 電話してくれたでしょ?」 「あぁ、そんな事か。 でもこの後はお前次第だ。」 「分かってる。」 部屋についた僕は机に向かった。 彼女の心に響くような曲を書く為に。
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