波風がつれてきた出会い

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昼食を終え、午後の撮影が始まった。 そして日が沈みあたりが暗くなった頃 今日最後のカメラが優希に向けられ その視線の先には晃がいた。 「んじゃシーン1、カット25 スタート!!」 雨が降る中傘を差し走る優希、 「晃!!待った?」 手を振り駅で待つ晃の姿を見つけた時、 雨でバランスを崩しこけそうになると 晃が走り出し傘を捨て抱き支えた。 「大丈夫か?」 「うん。ビックリした... まだ心臓がバクバク言ってる。」 「ったく、気をつけろよ」 「ごめん...」 優希も晃もずぶ濡れになり、2人は顔を 見合わせて笑った。 「ここまで濡れりゃ、傘の意味ねぇな。 今日俺の家で飯にするか?」 「うん!!」 晃は傘を閉じ駅まで2人で走った。 「はい、カット!!!確認して、映像に 問題がなきゃ本日の撮影は終了です。 お疲れさまでした、明日もよろしく。」 「お疲れ様でした。」 瑞樹さんの声で雨はやみ、晃達にバス タオルが配られた。 「ちょっと車に行ってくる。」 優希をお姫様だっこして、スタッフに 告げると走り出し、その後を追いかけ ようとすると、薺に止められた。 「晃に任せればいいじゃない。」 「だけど...」 「そんな事よりも練習しましょ。」 明日の撮影の位置に立つ薺。 優希を気にしながらベースを握り、所定 位置に立ち、パフォーマンスについて 話し合いながら練習を始めた。 ふっと頭の中に巡る嫌な予感――― 「っ...」 ベースを近くにいたスタッフに渡して、 「どこ行くのよ!!」 薺の声を聞き流して車に急いだ。 バンッ 「静かにしろ、今寝てる。」 晃に手を握られながら眠る優希の姿。 「薬はあったの?」 「あぁ、飲ませた。」 「まだ...飲んでたのか...」 「みたいだな。」 優希を横目に小さく呟いた。 龍平の傍にいても無理だったのか? そうだ、僕にできなかったことが、 龍平なんかにできっこない。 そうだよ、僕にできなかったこと... 薬から君を救い出すこと... 「別に非合法ドラッグじゃないし、 そこまで気にすることない。 ただの精神安定剤だろ?」 精神安定剤だったとしても、そんな物 なくても笑えるように、泣けるように、 苦しまなくても歌えるように...。 君の心を蝕むモノ、それは、本人しか 分からないのなら早く、打ち明けて、 手を伸ばして、僕らは皆、逃げないから。
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