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「りゅ...へぃ...」
弱々しい声で涙を流す優希の寝顔に胸が
締め付けられた。
「どうする圭吾、龍平呼ぶか?」
「...いい、僕が迎えに行ってくる。」
「車。」
ちゃり
優希のネックレスについてあるトップと
同じ宝箱と鍵が揺れた。
「有り難う。」
かしゃ
自分があげた物は返してきたのに、晃が
あげた物は今も身につけている...
何となくイライラしつつ部屋を出た。
「嫉妬か...みっともないな...」
鍵に付けてあったチェーンの輪に人差し
指に入れ、鍵をくるくる回しながら薺に
メールをうち、龍平を向かいに行く。
家につき、駐車場で変装してから、
車の外で煙草を吸いながら龍平君が
帰ってくるのを待った。
「え?圭...吾...さん?」
「もしかして今学校の帰り?」
「部活があったんで...」
龍平君は俯きつつ話し、僕とは目を
合わせようとしない。
当たり前と言えば当たり前だけど...
「ちょっとドライブしない?
話があるんだけど。」
「いいですよ、着替えてきます。」
「じゃここで待ってる。」
待つこと5分で龍平が来て、
「行こうか。」
僕達が今日泊まる予定のホテルに向う
「今日泊まりでも大丈夫?」
「だと思って許可取ってきました。」
「感良いね。」
それからしばしの沈黙。
空気が重くて、CDプレイヤーに手を
伸ばして音楽をかける。
「昨日優希から今までの事聞きました。
優希自身の気持ちとかも。」
龍平君が話し出した。
「そうなんだ...」
「迷ってるって言ってました。
自分の居場所がどこで、誰と居る事が
自分の幸せで、どんな歌を歌い続ければ
みんなが幸せになってくれるのかと。」
「龍平君はどう思うの?」
「できれば隣で歌って欲しいです。
ずっと笑っていて欲しいです。
だけど...優希には
俺だけじゃダメだと思います。」
「なんで?」
「時々、優希は近くにいるはずなのに、
心はどこか違う場所にあるみたいに、
笑ったりするから...」
肘をつき外を見る龍平は寂しそうで、
僕以上に優希の気持ちを一番に考え、
餓鬼なりに必死で1人の女性の心を理解
しようとしている。
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