波風がつれてきた出会い

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がちゃっ 「あ、龍平...どうしたの?」 「心配できてみたんだ。」 部屋にはいるとすっかり元気になり 優希は晃で話し込んでいた。 「起きてて大丈夫なのか?」 「うん。」 「無理するなよ。」 「ありがとう。 歌ったら帰るからちょっと待ってて。」 優希は龍平の腕を引き、部屋に招いて ソファーに座った。 「ちょうど曲が出来たところだ。」 晃は僕にベースを渡し小さく呟く。 「お前に送る新曲だとさ。」 別にそんなこと期待してたわけじゃない けど、どうやら僕は心底嬉しいらしく、 その嬉しさを隠しながら晃の隣に座る。 晃からの楽譜の説明が終わると、優希は 僕に耳打ちした。 「付き合わせてごめんね。」 「ううん、むしろ大歓迎だよ。」 僕が笑うとつられて笑う優希を見て、 後ろから晃が優希の頭を撫で、 「どうしたの?」 「ようやく笑うようになったな。」 優しそうに笑った。 「え?私はいつも笑ってるよ。」 不思議そうに答える優希に龍平君は、 「今日も可愛いよ。」 頬に触れておでこ同士をくっつけると、 優希は真っ赤になり俯いた。 「り、龍...平の...あ...あ、 頭おかしいんじゃないの?」 「これでも昨年の末テストは3位、学期 初めテストは学年2位、なんだけど?」 「じゃ目なんじゃない?」 「両目2.0。」 「じゃボケちゃったんじゃない?」 「じゃって言ってる時点でダメでしょ。 諦めな、俺にとって優希はどんな子より 魅力的で可愛いよ。」 柄じゃない言葉。 キザな言葉でも真面目に、でもどこか 誇らしげに、真っ直ぐ優希に言って、 そんな場面を見せつけられ、隠れていた 嫉妬心が顔を出し、 「どうかしましたか?圭吾さん。」 僕を見て妖笑みを浮かべる龍平君は絶対 的な確信犯... 「いちゃつくんだったら俺は帰るぞ。」 チューニングが終わった晃はめんどくさ そうに言うと、優希は焦りながら、 「じゃ今から歌う。」 ソファーの背に座った晃を後ろから抱き しめ、顔をのぞき込み、仕方なさそうな 顔をする晃の合図で演奏を始めた。
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