波風がつれてきた出会い

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これが僕の為に書いた曲? これじゃまるで... 「別れの曲...」 思わず口に出してしまうぐらい、心が 揺れ、何度も紡がれた愛してるの言葉に 胸をうたれた。 「ん...別れともとれるし、彼の中に 自分を残して期待している...また 自分を一途に見てくれるように...」 「少なくとも女はまだ彼が好きなんだ。 けど...ネチっこくねぇ?」 「本気の恋ほど忘れなれないものなの。」 龍平君の答えに晃が付け加える、 優希は僕に... どうしてほしいのだろう...? 「さて、歌ったし帰るか。」 優希が立ち上がると、晃は僕のポケット から鍵を取り出した。 「龍平達は俺が送る、圭吾は少し休め、」 立ち上がる気力もない僕は小さく頷くと 前から優希に抱き締められとてもとても 小さな声で 「千代ちゃんとお幸せに」 と呟いて離れていった。 「じゃ圭吾さん、お疲れ様でした。」 顔を上げた僕の目には、なぜか僕より 泣きそうな優希の手を龍平君が繋いで、 帰っていく姿を止める為に手を出せど 止めることはできずに、宙に浮く手を 拳に変えてソファーへ八つ当たり。 ぱたん 寂しく扉が閉められた。 「誤解...されてる...よな...」 晃がそんなこと吹き込むとは思えない。 だったらあとは本人ぐらいか... 「ったく余計なことを...」 だけど... 誤解されていなくても、優希の隣には 龍平君がいるのはまれは紛れもない真実。 「この歳で、本気の恋はつらいな。」 ムシャクシャする頭を抱え考えた。 だくどもし晃が言った事が優希の本音 だとすれば、僕は迷わず君を抱きしめ、 ゛おかえり゛と笑ってあげればいい。 「前進あるのみか...」 優希が書いたであろう歌詞を手にし、 裏を見てみると *圭ちゃんも 歌い続けてね。 私も また 圭ちゃんと肩を並べて 心から 歌えるように 頑張るから* 一瞬驚きはしたけど、思わずクスッと 笑みがこぼれる。 こんなが手紙が一通。 ただこれだけの言葉なのに、嬉しいと 思う自分は、まだ、優希に本気で惚れて いるらしい。
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