波風がつれてきた出会い

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落ち着いてからキッチンで水をコップに注いで、口に運んだ。 泊まりがけで龍平君を拉致し、いかに 自分が優希を思っているかを話通そうと 思っていたけど、取り乱した僕に気遣い 晃が2人を連れだしてしまった。 僕はどんな顔で2人を... 優希を見ていたのだろう... 今までは、突然居なくなった優希をただ 連れ戻したくて探していた。 何のために? これが自分の為だったと気づいた時から それは僕が招いた悲劇。 彼女の気持ちを、 彼女の本音を、 僕は聞いたことがない。 ただ――― 僕が好きだと言えば、 好きだと言う。 僕が一緒にいたいと言えば、 彼女は笑って傍にいてくれた。 その優しさに甘んじた僕は、周りが見え なくなっていたのか、はたまた僕自身が 見ようとしなかったのか... でもこれだけは覚えている――― いつも傍にいると思ってたから、 言葉を紡ぎプレゼントをあげて、 手を繋いで2人で前を向いた。 それが彼女への愛の証と僕が勝手に思い 込んで、君へ変なプレッシャーを与えて いたのかもしれない。 僕に愛されている君は、 僕から逃げてはいけない、 プレゼントはその鎖のように 君を羽ばたけないようにして... でも今なら分かる。 それが違っていたんだ。 好きだよの言葉より、 高価なプレゼントより、 彼女の小さな言葉にも耳を傾け、 差し出された手をそっと握って、 ゛大丈夫、共に行こう゛ なんて少しでも優希自身を見ていれば、 君の異変にも気づけていただろうし、 自分の自己満足につき合わせることも きっとなかったはず。 「さて、僕は奏でなければいけない」 はじまりの歌、 彼女...優希が僕に書いてくれた詩。 だから僕のこの曲を君のために歌い、 君を伝えよう。 ゛僕はまだ君を愛しているよ゛
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