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翌日。春香はRIPプロダクションの社長室に、夏樹と一緒にいた。
「ふむ、新谷春香、十五歳職業は高校生か」
理由は簡単だ。夏樹の誘いでRIPプロダクションの面接を受けているのだ。
「……歌の方は八雲君から聞いている。上手いそうだね。年齢も若いし顔もいい。文句なしだ」
社長の言葉に夏樹は表情を明るくする。
「しかし……この事務所に入るということは、ここと契約をするわけだ。そして君はまだ未成年。親の許可がいる」
社長の言葉。それは、春香が親を説得しなければいけないことを示していた。
反対され、大ゲンカをし、家出までした。その上で、親を説得し、この事務所に入ることを許可してもらう。
春香にそれが可能なのだろうか。
「やってみます」
春香はそれだけを言って、社長室を後にした。
「……ねえ、春香ちゃん」
「頑張ってみます。せっかく夏樹さんや社長さんも手助けしてくれてるんです。意地でも説得してみせます」
「……そう」
意志は、固いように思えた。それに、後はもう春香次第だ。自分が口出しできるレベルではない。夏樹はそう思い、それ以上は言わないことにした。
「でも、そのかわり、親を説得して、そして私が売れたら……」
耳打ちをする。春香と夏樹。二人だけのコミュニケーションが、少しの間続く。
「……え、ええっ!?」
夏樹の驚嘆の声が、オフィス内に響いた。
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