1人が本棚に入れています
本棚に追加
会場は歓声に包まれていた。
たった一人の少女に向けられる歓声。それを一身に受ける少女。
マイクを手にした少女は、大きな声で叫ぶ。
「みんなー! 今日はありがとーっ!」
少女の声と同時に湧き上がる会場。少女の表情は笑顔で満ちあふれていた。
数年前のあの日、春香が夏樹に言った事はこうだ。
『親を説得して、そして私が売れたら、その時は一緒にあの曲を歌ってください』
春香は、夏樹の歌っていた曲を知っていた。それは彼女が幼い頃、テレビで流れていた曲だった。
八雲夏樹。その歌唱力と勤勉な性格が受け、大ブレイクするも、その数年後に引退。ブレイクしたことがプレッシャーになったとのことだった。
そして、春香はそれを思い出し、夏樹に交換条件を提出したのだった。
最初のコメントを投稿しよう!