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「……本当にいいのかね?」
「はい、多分、これが限界ですから」
とある事務所のとある一室。椅子に座っている男と、机を挟んで女性が立っている。
「ふむ、残念だ。君ならこの事務所を立て直せるというのに」
「いえ……そんな。私なんて……」
「…………では、これは受け取っておくよ」
男の手には『退職届』と書かれた封筒が握られている。女性はそれを見て、こくりと頷いた。
「今までありがとうございました!」
「ああ、達者でな、八雲君」
女性は深々と礼をすると、部屋を出て行った。残された男は大きなため息を吐いて、背もたれによりかかった。
「どんどん離れていくな。まあ、仕方のないことだろうが……」
男の独り言に反応する人間は、誰もいなかった。
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