1人が本棚に入れています
本棚に追加
そして。
「やっぱりお風呂は魂の洗濯よねぇ……って春香ちゃん。楽にしてていいのよ?」
風呂上がりの夏樹が居間に戻る。
春香が連れて来られたのは公園からも事務所からも近いマンションだった。
3LDK、一人で暮らすには少し広すぎる部屋の隅に体育座りをして、春香はテレビを見ていた。
「はい」
夏樹はテーブルの上にオレンジジュースの入ったコップを置く。
「さて、飲みましょ。夜はまだ始まったばかりよ!」
そう言う夏樹の手には焼酎の炭酸割りが握られている。
「…………」
春香はテーブルに近寄ると、オレンジジュースの入ったコップを手に取り、口をつける。
「さてさて春香ちゃん。ご飯も食べてお風呂も入った。今日はいっぱいしゃべりましょー!」
夏樹の焼酎は半分も減っていないのに既に顔が赤くなっている。酔っている証拠だ。
「……夏樹さんは」
「んー? なになに?」
「夏樹さんはこの部屋に一人で住んでるんですか?」
「そうよー。私こう見えてもお金あるんだからー」
妙に間延びした口調で答える。RIPプロダクションは大きな事務所ではない。むしろ弱小だ。そんな所の事務員が、こんなマンションに住んでいるとは思えない。
が、そんなことを春香が言えるはずもなく、黙ってオレンジジュースを口に運んだ。
最初のコメントを投稿しよう!