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駿君が屈みながら私の顔を覗き込む。
「明日は、彼氏は僕だってちゃんと言わなきゃダメだよ、美佳子さん。」
「分かってる…」
駿君は目を細めて私を眺めると、節張った繊細な指先で私の頬を撫でた。
ゾクッと背中に痺れが走る。
駿君を見上げると、時折見せる、凄まじいまでの色気と欲望が入り交じった目で私を見ていた。
「帰したくないなぁ。」
「明日、一緒に帰るじゃない。」
私の言葉に、駿君は私を凝視する。
「そうですね。」
「だから今日は真っ直ぐに寄り道せずに帰るよ。」
「分かりました。」
それではまたお待ちしています、と艶やかな笑みを浮かべて駿君はお辞儀した。
駿君の夜はまだまだ長いらしい。
私は振り返る事なく、バーを後にした。
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