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あの頃の廣田さんの顔が浮かんだ。
自分に向けられることのない熱い視線。
身を切られるような苦しみを味わった。
心がギシギシ音を立てて、その痛みに気が狂いそうだった。
またそんな思いをするなんて絶対に嫌だ。
今度こそ私は壊れてしまう。
まだ、私は駿君には溺れてはいない。
私の気持ちも受け入れられてはいない。
私は駿君の“特別”ではない。
二番目でも一応彼女の様なものだと自負していたあの頃とは違う。
今なら間に合う。
お互いに嫌な思いをしない為にもけじめを…
「美佳子さん。」
「え。」
私が視線を上げると、美月ちゃんの隣に渦中の人が立っていた。
「ちょっと実家に用事があって。あ、美月。ちょっとパソコン貸して。美佳子さんに聞きたい事があるから。」
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