第4章~夜勤

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夜勤。 その響きだけで、遥奈は怖かった。 その日も日勤を終え、8時に寮に戻った。 夜勤のことを考えるだけで、気が滅入った。 だけれど、責任はある。 2時間の仮眠を取り、夕食を食べ、 11時半にはまた病棟に戻った。 12時半に夜勤の申し送り。 昼間、手術した2人を受け持つことになった。 そのうちの1人は体外式ペースメーカーが上手く乗らなくなり、外したとのことで、脈拍が50ほどしかなかったが、不整脈ナシ、異常なしと、先輩から申し送りを受けた。 夜中2時。休憩の時間がやってきたが、2人分の記録に追われていた。 その時、『休憩入れそう?』と先輩が来た。 モニターを見て不審がる先輩。『ずっとこの波形?』と聞かれ、 はぃ、そうです。サイナス=正常波形で送りもらってます。と答える。 先輩に12誘導心電図の指示が出され、急いで波形をとる。 心房細動という不整脈だった。普通、この不整脈は頻脈といって脈が早くなる不整脈だ。 だが、この人の脈は50と遅かったため、疑いもしなかった。 すぐに、薬液投与され、不整脈の治療が始まる。 30分後には治まったが、いつから出ていたのか、先輩と過去の記録をめくりながら見た。 夕方、ペースメーカーの異変があったとき、その時から始まっていた。 不整脈の起こっていた時間は、10時間を超えていた。 この心房細動は、血の固まりができやすく、それがいろんな場所の血管をつまらせ、様々な病気を起こす。 初めての経験に戸惑い、気付けなかった自分を責め、気付いてくれた先輩に感謝する遥奈が、そこにはいた。 これが、遥奈のトラウマの1つとなり、さらに夜勤に対する恐怖心を煽る結果となった。
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