~序章~

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初日。 まずは、先輩と一緒に、 どんな仕事をするかまわることになっていた。 遥奈は、3年目の先輩につくことになった。 その日の課題は、 『手術から帰ってくるヒトを受け入れる』こと。 まずは、部屋の準備に取り掛かる。 ここ、ICUは、 オープンスペースになっており、 ナースステーションを囲むよぅに、ベッドが並ぶ。 奥には、 感染症を持つヒトを隔離できるよう、 5つの個室もあるが、 ナースステーションから見ると全部が一望できた。 各ベッドにモニターがつき、 ベッドの足元少し離れたナースが記録を書くその机の頭上にもモニターがある。 病棟内をまわると、モニターだらけ、ということになる。 『手術から帰ってくるヒトを受け入れる』準備は大変なものだった。 人工呼吸器の接続は自家発電に切り替わるコンセントにつなぐ。 吸引のためのセット、 再挿管セット、 モニターの設定に、 記録用紙の準備。 そして、 1番大切な、輸液の準備。 いよいよ、手術が終わり、 患者さんが病室へとベッドごと運ばれてくる。 手術着なんて着ていなかった。 T字帯と呼ばれるふんどしのようなものをつけているだけ。 定位置にベッドが運ばれてくると、 そこに看護師が3人と医師が数名で取り囲む。 モニター心電図の取り付け、 動脈ラインの接続、 輸液の接続に血圧測定。 すぐに医師から指示が飛び、 看護師が走る。 そこから、 血圧の薬や輸血の投与が始まる。 まさに、戦場としか言いようのない、 緊迫した空間がそこにあった。 遥奈はただじっと、先輩たちの動く姿を見つめることしか出来なかった。
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