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ある朝のとある街のとある一軒家。
その一部屋に太陽の光が差し込んでいた。
「眩しい・・・・・・。」
部屋の主の少年が眠たそうに眼を擦っていた。
少年ーーーーアスール・レオラールは家から出て井戸で顔を洗い、意識を覚醒させる。
「もう春か・・・・・・早いな。」
アスールは独り言を呟きながら髪を整えた。
肩辺りまで生えている燃えるような赤毛を後ろで一纏めにし、水で撫でつけ、家へと入って行く。
「さてと。」
そう呟きつつアスールは自分の部屋のすぐ隣の部屋へと入って行く。
部屋の中には可愛らしい熊や兎などのぬいぐるみや、白とオレンジを基調とした女の子らしき部屋が広がっていた。
その部屋のベッドにはこんもりとした膨らみが一つ。
アスールはそのベッドに向かい話かけた。
「ミリア、起きてるか?」
「あと五分だけぇ~。」
「ダメだ、俺も仕事の時間だ。」
「むぅ~。」
唸るようにベッドから一人の少女が現れた。
アスールと同じ赤毛を背中に長く伸ばし、同じく瞳もアスールと同じ碧眼の少女。
「おっはよ!兄~さん。」
ニカッと笑いながら少女は元気よく言った。
「おはようミリア。」
アスールもただ一人の妹に笑顔返す。
彼女の名はミリア・レオラール。
アスールの妹であり、残された唯一の肉親である。
「すまないが俺は仕事に行って来る。また学校でな。」
いつもの事なのかミリアはすんなりと返事を返した。
「は~い。いつも通り授業の前にお弁当持ってくね~。」
「いつもすまない。じゃあ行って来ます。」
ミリアの頭を撫でつつ部屋を出る。
「いってらっしゃ~い。」
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