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「さて。」
部屋から出たアスールは目を瞑り呟いた。
「風となりて千里を駆ける。〈エアリア〉」
そう唱えると、アスールは光に包まれ、次の瞬間には姿は無かった。
*******************
ヒュン
小さな音と共に、アスールは大きな城の前に立っていた。
(いつも見てるけど慣れる大きさじゃないな・・・・・・。)
そう思いながらアスールは城の中へと歩みを進める。
城の前にある大きな門の前で衛兵が一人立っていた。
アスールはその衛兵に話しかける。
「おはようございます。特務隊[ガーディアンズ]所属、アスール・レオラールです。」
アスールは衛兵に向かって敬礼しつつ言葉を続けた。
「特殊警護任務のため、入城の許可をお願いします。」
「お、アスール君か。いや~毎朝君も大変だねぇ。よりにもよってその任務なんて。」
どうやら衛兵とアスールは知り合いのようで、親しい感じで言葉を交わしていた。
「仕方ありませんよ、任務ですし。」
アスールは苦笑を交えつつ答えた。
「何より俺自身守りたい人を守れと言われてるんですから本望です。」
「相変わらずしっかりしてるね~。うちの王子様も見習ってくれればいいんだけど。」
今度は衛兵が苦笑しながら言った。
「そうですね、また言っておきます。」
「是非頼むよ。・・・・・・おっとすまない引き留めてしまったね。さ、入ってくれ。」
「いえ、ではまた。」
「あぁ。頑張ってな~。」
アスールは城の門をくぐり、また二言ほど呟くと、光に包まれて消えた。
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アスールが着いたのは広い廊下にある二つの扉の前。
そのうちの左の扉にアスールはノックをした。
「アスールです!起きておられますか!?」
アスールは大きな声を扉に向かってあげた。
しかし中からは何の言葉も返ってこず、物音すらしない。
「はぁ・・・・・・。」
アスールはため息をつき、仕方なさそうにドアノブに手をかけて中に入って行く。
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