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部屋の中は豪華そうな装飾で、タンスや机なども高級そうなものばかりだった。
しかしその中には、ミリアと同じようなぬいぐるみが何体か飾ってあることから、この部屋の主がおそらく女性であることを物語っていた。
アスールは豪華な天蓋付きのベッドに近寄り、中で寝ているであろう人物に声をかける。
「起床の時間です。ご起床下さい。カナリア・アスリティ王女。」
「ん~。ふぁ?」
ベッドから少女が体を起こした。
「おはようございます。直ぐに登校のご準備を。」
アスールは頭を下げつつ言った。
この少女の名はカナリア・アスリティ。
アスール達の住むアスリティ王国の姫君である。
美しい容姿と肩辺りまで切り揃えられた金髪と澄んだ金眼も相まって、国民達からは大きな人気を得ていた。
「アスール~・・・・・・。」
目が完全に覚めたのか、アスールをにらみながら唸るように言った。
「なんでございましょうか、カナリア様。」
「お前はいつからそんなよそよそしくなったんだっ!いつも通りに接してくれていいと毎回言ってるじゃないか!」
「しかし、いくら幼馴染と言っても今は公務中で・・・・・・」
アスールは焦ったように言い訳をしたが言葉を遮るようにカナリアが言葉を被せた。
「うるさいっ!まずその敬語をやめろ!」
アスールはこの状態のカナリアにはかなわない事を知っていたため、おとなしく従うことにした。
「わかったよ。カナリア様。」
するとカナリアはまだ不満があるようで怒った顔を崩さない。
「私の知っているアスールは私の事をそんな風には呼ばないのに・・・・・・。」
アスールは苦笑しつつ答えた。
「わかったよカナ。学校行くから早く着替えて食堂に来てくれ。」
アスールがそう言うとカナリアは嬉しそうに頷いた。
「やはりアスールはそうでなくてはな~。あ、次によそよそしい態度とったら国外追放するから。」
恐ろしい事を言いながらベッドから起きるカナリアを見てアスールは思った。
(権威乱用・・・・・・。)
アスールは、またため息をつきながら部屋から出て行くのだった。
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