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しばらく外で待っていると、アスールと同じようなデザインの制服に着替えたカナリアが部屋から出てきた。
「すまない、待たせたな。」
「いいさ、大して待ってもいないからな。」
ふとカナリアの頭を見ると、整えられた髪に一本だけぴょこんとはねている部分があった。
アスールはカナリアに近づくとはねた髪を直そうと頭に手を乗せ、ゆっくりと手櫛で梳かしていく。
「うぇぇ!?ア、アスール?」
「じっとしててくれ。寝ぐせ直すから。」
カナリアは顔を真っ赤にしながらアスールの言うとおりにじっとしていた。
(まったく。人の気も知らないでこんな事…・・・)
カナリアは赤面しつつもされるがままであった。
と、その時カナリアの部屋の隣の扉が開き、声が響く。
「おはよう~。朝からラブラブだねぇ、カナにアスール。」
声がした方をカナリアとアスールが向くと、そこには茶髪茶眼の優しそうな顔つきをした少年が立って笑っていた。
「キ、キキキキリア!違うこれは・・・・・・!」
「アスールに寝ぐせ直してもらってたんでしょ~?わかってるよ、そのぐらい。」
「だったらラ、ラブラブとか言うんじゃない!」
カナリアは赤い顔のままキリアと呼ばれた少年に怒鳴った。
彼は名をキリア・アスリティといい、この国の王子に当たる人物である。
カナリアとは共に産まれた双子であるため、兄、姉の概念が二人には無いらしい。
「おはよう、アスール。」
「おはよう、キリア。」
アスールはこの双子とは幼馴染であり、身分を超えた付き合いなのである。
ちなみに妹のミリアも二人とは幼馴染である。
「いつもありがとねアスール。毎朝ミリアとカナ起こすの大変でしょ~?」
アスールを労わるようにキリアが言った。
「そんな事は無いさ。これが俺の仕事だから。」
アスールがそう言うとカナリアは不機嫌そうに頬を膨らませた。
「じゃあ仕事じゃ無かったらアスールは私を迎えに来てはくれないのか?」
「いや、仕事じゃ無くても二人を迎えに来る。幼馴染なんだからな。」
アスールは微笑みながら言葉を返した。
「そ、そうか。ならいいんだ、うん。さぁ!食堂に行って朝食を摂りに行こうではないか!」
途端に機嫌が良くなったカナリアを見て、アスールは不思議そうにしていた。
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