第1話 君

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「風邪引くぞ。」 オレはたまたまあったハンカチを中藤に渡す。 中藤は少し迷った末、ハンカチを受け取った。 「ありがとう、倉本くん。」 「あぁ。」 屋上にある机に制服を広げる中藤。 オレはそれを寝転がって見ていた。 制服を広げ終わり、中藤は少し離れたところに座る。 「倉本くん、屋上が好きなの?」 「あぁ。一番落ち着く。」 「そっか・・・。」 「なぁ、中藤。」 「何?」 「嫌になんねぇの?学校。」 オレの質問に少し間を置いて中藤は笑顔を浮かべた。 優しく綺麗な笑顔。 オレの胸が高鳴る。 「大丈夫だよ。」 ただそれだけ言って、中藤は空を見上げた。 オレも空を見上げる。 ゆったりとした時間が流れていく。 オレたちは他愛のない話で盛り上がり、笑いあった。 そして、呼び捨てで互いの名前を呼び合うほどに仲良くなった。
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