第2話 幸せな日々

3/4
前へ
/15ページ
次へ
昼休み終了を告げるチャイムが鳴った。 「ありがとう、修二。」 「あぁ。後で保健室行こうぜ?」 「ううん、大丈夫。」 亜津紗は人目のあるところでオレと関わるのを嫌がる。 オレに迷惑をかけたくない。 そう言って人気のないところで逢う。 恋人たちの逢い引きのように。 まぁ、オレたちは恋人じゃないが。 「だいぶ、楽になったし。」 「亜津紗・・・。」 「大丈夫!」 亜津紗は弁当箱を持ち、立ち上がる。 オレは座ったまま、亜津紗を見上げる。 「修二に迷惑かけっぱなしはよくないよ。」 「オレは・・・!」 迷惑なんて思ってない、そう言おうとして言葉に詰まった。 亜津紗の黒の瞳がやけに真っ直ぐで強い光を宿していたから。 「このイジメはあたしの戦いだから。」 「戦い?」 「そう。あたしは弱いけど、いつも謝ってばかりだけど、戦ってるんだよ。」 「何と?」 「自分自身・・・かな?」 堂々とそう言い、亜津紗はかわいらしく笑った。 すごい、とただ単純にそう思った。 同い年のはずの彼女がとても大人に見えた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加