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「あ、あらあらどうしたの?何か忘れもの?」
園長先生は膝を曲げ、僕と目線を合わせてそう尋ねた。
「帽子……」
「帽子?」
「あ、園長先生、多分圭介君は外用の帽子を取りに来たんだと思います」
「あら、そうなの?」
うん、と僕は小さく頷いた。
「じゃあ早く取って、外に行っておいで」
「うん」
さやか先生に促され、僕は帽子を手に取り、そこに書かれている名前を確認した。
佐東圭介。
うん、間違い、僕の帽子に間違いない。
僕は帽子を被ると、そのまま教室を出た。
あの時、さやか先生と園長先生は何をしていたんだろう。
今ならわかる。
でも当時の僕にわかれと言うのは難しいだろう。
だって、今思い出しても信じられないのだから。
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