【第四回 一人旅】

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志紀ったらあんなに怒ることないじゃない。 カッとなって思わず、外に出ていく時に酷いことを言ってしまった。 ……また、喧嘩してしまった。 「………ん」 それからどれくらい経っただろうか。 いつの間にか眠っていたらしい。 しかも公園で…… 「……でも暖か…」 「目覚めた?」 前から聞こえてきた声に目をパチクリさせる。 そしてその男性を見て驚いてしまった。 え?あれ? 「可愛いねー、こんな所で寝てたら襲われちゃうよ?」 ニコッと笑う彼は志紀にそっくりだった。 でも明らかに大人っぽい。 志紀が大学生になったらこんなふうなのかな…… 「起きるの待ってたんだ。ホテル行く?」 「……あー、そういうのもうやめたから」 そうあたしは返しながら、かけてあったコートを彼に渡した。 「へぇ、やってたみたいな言い方だね。んじゃ家に帰らなきゃね」 こんな時間だし、と言いながらあたしに腕時計を見せてきた。 「……一時」 一時? 昼の? 違う、辺りが暗い…… 「やっば……」 朝に喧嘩して、公園に来たのに…… お母さん、心配してるかも。 こんな時間まで外にいるのは荒れてた時以来だ。 「……ありがとう。じゃ」 短く礼を言い、公園をでる。 最後に彼の方を振り向けば、笑顔で手を振ってくれた。 ……朝からずっとそばにいてくれたのかな。 自分に何も害がないからだ。 自分の家が見えてくると、誰かが立っていた。 キョロキョロとしているようだが、それが誰なのかはわかる。 そしてあたしの姿を発見した瞬間、ホッとしたのもわかった。 「……なにしてんの」 彼にそう尋ねれば別に、と顔を背ける。 頬を赤くして、待っててくれたのかな? こんな寒いのに…… 「ごめんね」 あたしは小さくそう言った。 彼は頷く。 そして心配かけんな、と言った。
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