壬生浪士組

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‐壬生浪士組‐ 「これからぜよ」 冬月は門の前に仁王立ちし、ほくそ笑んだ。 と、 「寒い寒い。」 後ろから間の抜けたような声が聞こえたかと思うと、振り返る冬月に目を輝かせる青年。…それも、気に入らない程、自分の背丈を追い越している。 「入隊希望ですか?」 如何にも。と、答える前に青年は、「嬉しいなあ」嬉々として冬月の手を引き、あっさりと屯所の中へ駆け込んでしまった。 呆気に取られる冬月に、青年は笑いながら、 「俺は沖田 総司。いや~人手不足で!今日は良い日だな~あ、でも入隊試験があるんですよ!っと、お団子食べます?」 ペラペラと、勝手に喋ってくれるのは冬月にとって、有り難迷惑な事だが。 「入隊試験」その言葉には食いついた。 「わしに勝てるもんが、おるがか?」 馬鹿にしたような冬月に、沖田が不意に足を止めた。 「貴方…出身は?よく見ると、青いですね。瞳が」 まるで会話にならない言葉に、冬月は眉を潜めつつ、 「出身?ほんなもん無いち。根なし草がや。この目は生まれつきじゃき」 冬月は不快に思いつつも、嘘偽り無く答えた。本当に、自分の出身地など有りはしないのだ。 ただ、ずっと松下村塾に居たものだから、方言は無茶苦茶だ。 「…土佐では?」 無いと言っているものを、改めて土地名まで出し聞くのだ。何かあるのだろう。察した冬月は、 「何年も根なし草じゃったき、言葉がおかしいんじゃ」 答えてやると、沖田は落ち着いて廊下を案内する。 着いて歩く冬月。 根なし草…間違いでは無い。自分は元々何も無く、名前すら持たず、ただ生きていただけだった。 それを拾われたのだ。…冬の日に、吉田 松陰に。
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