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「…おんし、強いがか?」
いきなり試験と言われ、道場に立たされたのは、当の本人冬月と…沖田だった。
「まあ…多分?それなりに?」
微笑する沖田に、食えない男だ。冬月は思いながら構えた。
先ずは手の内を見ようか…冬月は考え、先手を取る。
カッ…ン!
静まり返っていた道場内に、木刀が交わる音が響く。
(…重い)
先手を取った冬月だが、それをはね除けるような沖田の木刀が、重い。
それだけだが、冬月には十分だった。
(強い…)
ならば、遠慮は要るまいて。
そう本気を見せる冬月の纏いは、冬よりもなお、冷たく、凍てつく波動。
それでも笑みを絶やさない沖田は、青龍と鳳凰のようだ。
傍観者達を、虜にしながら噛みつくようで、皆が唾を飲んだ。
そして何度も繰り返し響く木刀の交わる音。それは、最初の一手とは程遠いような、今にも折れてしまう。と、木刀が上げる悲鳴のようだった。
「ケリが付かんと、入隊させてもらえんがか?」
余裕の青龍・冬月。
「もう十分ですけど、面白くて」
こちらも余裕の鳳凰・沖田。
「決まっとんじゃったら、もうええきに」
と、冬月が木刀を下ろした瞬間。
ヒュッ…
風が、唸った。
冬月は内心舌を打ちながら、煩わしそうに一手を避け、次を読む。
「この突きが一手と見せかけ、瞬時に上がる速さで二手の突きがくる」
冬月の言う通り、沖田の突きは一度に納まらず、二手・三手。
冬月はもう癖になっているのか、クツクツ。と喉を鳴らした。
「けんど…」
冬月が沖田の二手先で、下ろした木刀を構える。
「わしも速さが売りじゃ。腹ががら空きぞ」
言うと同時に、冬月の木刀が沖田の脇腹にめり込んだ。
グッと堪える沖田に、決まる勝敗。
「…取られました」
沖田の言葉に、蛇に睨まれた蛙のようになっていた傍観者達が、一斉に驚きを声にした。
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