壬生浪士組

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その中から一人、拍手をして見せた男が居た。 「総司に勝つとは。いやはや恐れ入ったよ」 ガタイの良い角ばった顔の、けれど笑窪を作る男だ。 「近藤さん!凄い入隊者ですよね~」 沖田が犬のように笑い駆け寄る。 その姿で、関係図が見えた。 「これから世話になりゆう冬月いいますき。」 冬月は近藤という大柄な男に軽く頭を下げ、井戸を借りに外へ出た。 冷たく吹く風に当たりながら、もっと吹けばいい。そう思った。 何もかもを凍らせる程に、冷たく、冷ややかに音もたてずに吹き続ければ良い、と。 その願望は水に表れていて、誰も触れたくない程に氷のように冷たく。気持ち良い、とすら思った。 「お前、何者や」 気配はとうに感じていたが、面倒だから。と、敢えて気付かぬ振りをしていたのに早々に敵意を剥き出しにされるとは。 「これから世話になります冬月いいますき」 冬月は近藤に言った言葉を、そのまま男に返した。 「どっから来たんや」 二度も同じ事を聞かれ、冬月は癪に触るもグッと堪える。 「沖田さんにも言うちょるが、ただの根なし草じゃき。それ以外に何の用ぜよ」 冬月の言葉に納得したのかしていないのか。ただ、 「冬月さーん」 沖田の呼ぶ声に、男は音も無くその身を翻した。 「どうかしましたか?」 駆け寄ってきた沖田に、冬月はフッと笑うと、 「何かあるがか?」 さも何も無かったように言う。 「皆さんに紹介しますから」 沖田の言葉に、また面倒な…思いながらも、仕方ない。 「ちっくと待っとおせ。」 言い、顔を洗うと沖田の後ろを着いて歩いた。
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