夢と悪夢と現実と

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ウェスペルは速足で回廊を進む。 いくら殿下のお稽古の指導であろうと、上官は厳しく特別扱いなどしてはくれないし時間だって待ってはくれない。 小さく息を吐き、近道のためとんっと軽く地を蹴った。彼自慢の跳躍力で軽々塀を越えれば目的地である訓練場はすぐそこである。 同僚たちは整列していたが、教官はまだのようだった。小さく安堵の息を吐き、ウェスペルは列に加わった。 やがて教官殿がやってきて、拡声器など必要なさそうな大声でいつもどおりのお堅い話をはじめる。聴覚の発達した兎であるウェスペルにとってはおっさんのしゃがれた声などという騒音は苦痛でしかない。 今日もまた、有難い教訓とやらを右から左に聞き流すのだ。
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