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とてとてと、ご機嫌な足取りで先程の少年
殿下は自室に戻る。
ただいま。そう穏やかに鏡に話しかけるのだ。
鏡の虚像…否、写し出された鏡のようにそっくりに作られた隣室から、鏡の額のように飾られた窓から、虚像のような少年がでてくる。
おかえり、そう静かな声音で告げて。
剣の稽古楽しいよ?またには外にいかないの?朗らかに話しかける少年と違い、虚像は小さな声でイヤだと言ったきり。
楽しいのに、とまだ不満げな殿下に虚像は
君は皆の理想の偶像を演じてればいいの
と、睨み付ける。
わかってるよ、此処は暖かいし、飢えもないし、理不尽な暴力もないもの。ぼくだって追い出されたくない。
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