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――夜は始まる。命を生け贄に、月を赤く染めて。
「お帰り。じゃ、行くか」
赤い月を写した湖から出てきた青年に、仮面の男は手を差し伸べた。青年はうつろな目のままその手をとる。
男は笑い、マントの中に青年を招き入れる。意識もはっきりしていなさそうな彼の耳に口を寄せ、低い声で囁いた。
「今度こそ世界を滅ぼそう。君の存在理由のために」
青年は口を開かなかった。代わりに、彼にしか分からないぐらいわずかに頷いた。
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