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ある寒い雪の降り積もる日にわたくしはいつもの様に餓えた腹を抱えて食べ物を求め街をさまよっておりました。冷たい雪の上を凍傷の足で踏みしだく度に刺すような痛みがわたくしの身体を駆け巡りました。
それでも諦めれば数時間もしないうちに凍死することは日を見るよりも明らかです。
ですから、わたくしはただひたすら路地裏のゴミ箱を漁り廻っていたのです。
しかし夜も遅いせいかあらかたの残飯は既になく、散々に噛み砕かれた鶏の骨が冷たい雪に埋もれるばかりでした。
流石にそれらを食べるわけにもいかず、わたくしは暫く途方にくれていました。
しかし何気なく他所に目をやったときに、路地のもっと奥の方。曲がりくねった細い道の向こうから僅かにぽう…と明かりが漏れているのが見えました。
皮一枚ならまだ残っているかもしれない
という淡い期待を胸に、既に感覚のない足にむち打ち光の射す方へと入って行きました。
果たしてそこには調理前と思われる生肉が二枚と出汁に使ったであろう骨のカスがまるまる廃棄されておりました。
更に幸運なことに、遠くから見えていた光は、僅かにあいたドアから漏れる暖炉の明かりだったのです。
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