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その生意気な反論が気に障ったのか、虐めていた一人が魔法を放とうとした。
右手に小さな炎が灯る。
「生意気だ!!」
そう言って右手が振り下ろされる。
イノリは恐怖に眼を瞑る――
しかし、予想された痛みは彼女には訪れなかった。
それどころか、
「うわぁぁっぁぁぁぁーー!!」
先程の少年の叫び声が聞こえ、イノリは恐る恐る目を開く。
そこには、炎が灯っていた右手ごと氷で固められている少年がいた。
「おい」
その声にイノリや虐めていた連中が振り向く。
その声の主にイノリは驚き、他の者は恐怖で顔を歪めた。
ユーリが虐めていた連中を睨みつけて、ゆっくりと歩き近づいて来ている。
「失せろ」
彼の、その一言は静かに重く響いた。
「な、何だよ。お前」
「やるってのか!?」
「こっちには数で……」
虐めていた連中が口々にユーリの言葉で立ち向かおうとするが、気持ちとは裏腹に腰は引け、言葉は震えていた。
「失、せ、ろ」
ユーリがもう一度だけ、一言ずつ力を籠めて言った。
そして、同時に僅かだが魔力を高める。
それを感じ取った連中は、恐怖に負け逃げていった。
「張り合いの無い奴等だ」
ユーリは彼等の背中を見ながら呟いた。
そして、イノリの方を見る。
彼女は驚いた表情のまま、固まりユーリの方を言葉無く見つめていた。
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