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「終わりだ」
ロキは静かにそう言った。
見据える視線の方向にはケイトが大の字で倒れている。
ケイトに降り注いだ氷の雨霰は、彼が倒れるまで続いた。
数えることが絶望にも近い魔法が止み、今の状況となっている。
「けど、何で氷の壁は壊れへんのや?」
素朴な疑問を九頭が言葉に出す。
彼の頭の中にも、一度はケイトが壊せた氷の壁が今度は壊せなかったことに納得のいかないことであった。
「それは、あの氷の壁は魔力を凝縮させた立派な防御魔法だからだ」
その問いに答えたのはロキだった。
彼自身も防御魔法を得意としており、解り易く解説をしてくれた。
ケイトが最初に壊した氷の壁
これは、ユーリが瞬時的に発生させた障害物なのだ。
氷の厚さだけが強度を示す。
だから、ケイトの力を持って破壊もできた。
しかし、壊せなかった氷の壁
これはケイトの接近を許しても、詠唱を行い魔力を高め生み出した。
氷の壁の中に魔力を凝縮させ、表面にも纏っている。
強度は厚さと使用した魔力に比例する。
ユーリの魔力は高い……だからこそ、ケイトの攻撃を弾き返すほどに強固な壁となった。
「ほんなら、あの壁を壊すんは無理ってことですか?」
説明を聞いた九頭は理解した上で尋ねる。
「防御魔法は完璧なものじゃ無い。例えば、あの氷の壁もベースは『氷』だ。やっぱり火には弱いだろうし、全ての衝撃を跳ね返せる訳ではない」
そう完璧では無い。
ある一定以上の破壊力をもってすれば砕ける。
だが――
「魔力を持たないケイトに、それは無かったということだ。力は届かず、勿論『火』は出せないからな」
そう言うとロキは一歩踏み出す。
「……何を?」
その動作にレミーが尋ねる。
「ここでユーリは止める。もうこんな惨劇は御免だ……お前も手伝ってくれ」
「……すみません。断ります」
「おい!!」
「……ここで邪魔したら、俺がアイツに殺される」
「邪魔って――もう決着は、」
「……勝負は、ここからですよ」
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