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――一体何が起きた?
目に映るのは空、地面の冷たい感触が熱い身体を冷ます。
ユーリは自分の身に何が起きたのか解らなかった。
……あぁ、そうか。壁が破壊されて――
ゆっくりと思考が回復する。
と、同時に身体に走る激痛を認識した。
吹き飛ばされた衝撃による全身の打撲
右肩からは血が流れているのが解る。
目線だけ動かし、右腕を見る。
どうやら繋がっているらしい。
受けた攻撃、衝撃、痛み……右腕全てが吹き飛んでいても何も不思議ではなかった。
寧ろ、繋がっていることが彼にとっては驚きだった。
負けるのか、俺は……
何が起きたのか理解出来た。
しかし、思考は動けど身体は動かない。
今まで生きてきて初めての状態であり状況であった。
俺は間違っていたのか?
二人の男から否定された『強さ』
だが、関係無いと思っていた。勝利すれば正しいと思っていた。
しかし――
何故、俺は『強さ』を求めた?
遠のいていく意識で問いかける。
元々、自分は何がしたかったのか?
強くなろうと思った根源は何だったのか?
その答えは解らない。
きっと答えてくれる者もいない。
何で……だ……っけ?
意識は混沌とし、渦を巻き沈んでいく。
思考回路を走る信号も、徐々に減速し止ろうとしている。
視界は黒に染まっていく。
見えている景色が遠のく意識に比例して黒くなる。
黒く
黒く
黒く
ユーリは、完全なる闇に落ちた。
兄さん――
一つの声が闇の中で響いた。
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