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身体が軋む
意識が混沌とする
一瞬でも気を緩めれば倒れてしまう。
だが、目の前には戦うべき相手がいる。
相手の攻撃を受ける度に意識が消えそうになるが倒れる訳にはいかない。
魔力が言うことを効かない
魔法が上手く使えない
だが、目の前に勝ちたい相手がいる。
形振りを構っている暇はない。
ユーリはケイトの太刀に注意を払いながら戦う。
今までと同じように魔法を使って勝てる相手ではない。
ならば、自分の魔力を全て開放し今までの魔法を越える威力の魔法を放てねばケイトは倒せない。
過去に、そのようなことは試したことも無いが、それでもやるしかなかった。
しかし、実際は全くもって上手くはいかない。
ダメージがあるとは言え、それ以上に魔力が扱いきれない。
例え全快とはいえ、扱うことは出来なかっただろう。
しかし、それでもやるしかない。
今は魔法とは言えない、攻撃をぶつけることしかできなくても彼は全力で戦っていた。
一方、ケイトも全力で戦っていた。
とてつもない魔力を感じながらも、彼は攻め続けた。
随所にユーリの攻撃は飛んでくる。
しかし、先程までの威力は無い。
相手は太刀での斬撃を意識しているらしい。
打撃は入れど、太刀は紙一重で避けられる。
ケイトは全ての攻撃に渾身の力を籠めて放った。
相手が多少弱っていたとしても関係は無い。
それは、全力で挑んでくるユーリに対しての礼儀でもあり、彼の実力を認めた上で油断をしない意志の表れでもあった。
「うぉぉぉぉ!!」
「がはっ!!」
ケイトの前蹴りがユーリの鳩尾に入る。
続いて、太刀での横払いは避けられる。
しかし、それを予期していたケイトは太刀を振るった勢いをそのままに廻し蹴りを放つ。
これがユーリの顔面に直撃した。
その威力にユーリの一瞬飛んだ。
そして、その隙をケイトは見逃さない。
――決める
――マズい
各々の思いが交錯する中、ケイトが踏み込み太刀を振ろうとした――
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