激突

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それからの日々は少しだけ変わった。 虐めの対象はイノリには違いなかったが、ユーリが彼女を護るようになったのだ。 それは兄としての感情か 単なる気まぐれか 彼女に礼を言われたときに感じた気持ちか どれが理由になるかは解らない。 だが、ユーリは彼女を護り続けた。 相手は自分より年上のときも、呆れてしまうほどの人数が相手の時も ユーリは戦い、勝ち続けた。 数多くの実践は、経験となり努力なくとも彼を強くし続けた。 そして度重なる戦いの中、ユーリは虚無感に飲み込まれていった。 何故、イノリを助けたのか イノリを護ったのは何故だったのか イノリに礼を言われた時に感じた気持ちは何だったのか ただ繰り返す戦いの日々で、彼は勝ち続けることしか出来なかった。 何故、戦うのか? 何故、負けたくなかったのか? その理由も解らぬまま彼は戦い、勝ち、生きてきた。 いつしか戦うことだけが、彼の中で存在の証明となっていた。 そして、時を経て彼はLCアカデミーに入学することとなる。 ただ、どれだけ時間を経ても彼が戦い始めた『きっかけ』は思い出せぬままだった。
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