473人が本棚に入れています
本棚に追加
「……何が起きたんだ」
ぽつりとレミーが呟いた。
つい先程までケイトの勝利を確信していた。
しかし、現状としてケイトは倒れユーリが立っている。
レミーは状況が理解出来なかった。
「まさか、この土壇場で……」
そう言ったのはロキだ。
彼も驚いた表情をしていたが、レミーとは少し意味合いが違う。
ロキは全てを理解していた。
「な、何が起きたんですか?」
レミーが尋ねたかったことを九頭が聞いた。
どうやら彼も何が起きたか理解出来ていないらしい。
「簡単に言うならばユーリが全開まで開放した魔力を使いこなした……いや、使いこなしたという表現は違うかもな。ただ、初めて全ての魔力を使い攻撃し成功したんだ」
ロキの先程の一瞬の出来事を説明した。
ケイトの攻撃に対しユーリは咄嗟の行動で一歩距離を詰めた。
それは偶然にもケイトの太刀の直撃を避ける距離となる。しかし、ケイトも多少の軌道修正を行いユーリの攻撃を続行した。
だが、そのときだった。
ユーリは右手に開放された魔力を収束させ、ケイトの胸に向けて放ったのだ。
従来なら、詠唱を行い魔力を高め、魔力に属性や形状、用途の情報を付加させ、放つというのが簡単な仕組みだ。
だが、今回ユーリは詠唱や付加という工程を飛ばし単純に放ったのだ。
だから、これは使いこなしてもいないし魔法とも言えない。
しかし、ユーリの全ての魔力を収束して放った単純な攻撃は強力だった。
それはユーリの持っている魔力が高いこともあり、また全開された魔力の制御は難しいが単純とはいえ魔力全てを使った攻撃ができたのはユーリの才能と実力が高いことに他無い。
「なるほど、それでケイトが倒れたんですね。ユーリの痛そうな顔は反動ですか?」
「あぁ、ケイトに貫かれた傷にかなりの衝撃がいったんだろう。右腕が繋がっているのが不思議なぐらいだ――!!!!」
話の途中でロキが言葉を止めた。
理由は一つ。
ケイトが立ち上がったからだ。
しかし……
「これは……」
「……マズイな」
「もう無理やろ」
三人が言葉を詰まらせる。
それはケイトの様子に違和感を感じたからだ。
最初のコメントを投稿しよう!