473人が本棚に入れています
本棚に追加
腕一本を犠牲にしてでも勝ちたい
この考えはユーリだけでは無かった。
ケイトも全く同じ考えに至ったのだ。
そして、その考えはケイトに一つの行動をさせた。
ユーリの右の掌に、自分の左拳を合わせる
言葉だけ並べると、大した行為ではない。
だが、実際は大砲の砲口に身体を突っ込み暴発させるのと変わらない。
二人の間で発生した暴発は砂埃を立て、二人を弾き飛ばした。
「ぐぁっ!!」
ユーリの右肩に激痛が走った。
自分の状況を確認する。
右手は――動かない。
だが、意識も体力もまだ少し余力がある。
ならば、距離を取って仕切り直す。
相手にもダメージはあるはず、後は残った魔力を使い魔法で攻撃して消耗戦に持ち込む。
その結論に達し、ユーリは後方へ下がろうとした。
しかし――
「うおぉぉぉぉっ!!」
「なっ!!!?」
砂埃の中からケイトが現れた。
左腕を力無くぶら下げ、右腕一本で太刀を握り力強く振りかぶっている。
一歩引く
体勢を立て直す
様子を見る
そんな言葉はケイトの中には無かった。
例え左腕が使えなくなったとしても、
進む
それしか無かったのだ。
ケイトとユーリの考えは途中まで全く同じだった。
しかし、此処に来て少しの違いが生まれ、結果として今の状況を作ったのだ。
――ケイトの太刀が振り下ろされる。
そのときに、
「全く、無茶苦茶な男だ」
ユーリは一言呟いた。
そして太刀はユーリの上半身を切り裂き、衝撃と共に彼を吹き飛ばした。
地面に大の字で倒れたユーリは立ち上がることは無く、意識は闇の中に沈んだ。
ケイトもその場に膝を着き、息を切らしながら、
「お前も大した男だよ」
そう言って握っていた太刀を置く。
地面と刃がぶつかり響く音が、戦いの終結を告げた。
最初のコメントを投稿しよう!