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深呼吸してから家の中に入って普段はしない扉の鍵をかける。防衛本能が当一の体を動かした。
そして玄関で気持ちを落ち着かせてからリビングに向かった。
「えらいものを見てしまった。あの時さっさと帰ってればよかった」
今さら後悔しても仕方がないことは当一自信もわかっている。でも後悔せずにはいられない。
「これからどうしたものか…自然に付き合っていったほうがいいのか?」
そんな事を言っているが結論は出ている。普通に接するなんて無理に決まっている。
「逆にネタにしてやるか?」
少し考えてみた。幼馴染みをいじっている姿を。
「いや無理無理! それは出来ない。そんなことしたら殺されてしまう」
脳内妄想がどのようなものだったのか当一はすぐに無理だと確信した。
「だぁーもういい! 考えても無駄だ。自然な流れにまかせるしかない」
思い切って開き直った。加奈が話を振らなかったらそれでいいわけだし、学校では話なんてしない。
何もなかったかのように生活しようと決意した。
その日の夜。当一は自分の部屋のベッドでうなだれていた。
(今日は眠れそうにない)
そう思いながら布団にうずくまっている。 ケータイで何時か確かめたりして気を紛らわしているが一向に落ち着かない。
「まだ11時か」
いつもならまだ活動時間だが今日は早く眠りにつきたかった。
あれを見てからずっとソワソワしてる当一は早く忘れたいと思い寝ることを選んだのだ。
「あ~眠れん!」
布団から飛び起きると同時にケータイが鳴り響いた。
おもむろにケータイを手にとって見たら着信だった。
市宮 加奈
ケータイの画面にはそう表示された。
当一はその名前を見るや否や固まってしまった。
問題の張本人。内容は分からないが絶対に何か言われることは確信できる。
「どうしよう…」
ヘタレ男子高校生は20秒あまり鳴っていた着信に出ることが出来なかった。
少し安心したようにベッドに倒れこむ。
しかし、またすぐにケータイが鳴った。 もちろん加奈からだ。
「もう出るしかないよな…」
このままではラチがあかないと思い意を決して電話に出てみる。
「はい…もしもし…加奈か?」
幼馴染みに完全にビビっている当一は若干声を震わせている。
『ちょっと、一回で出なさいよ!』
加奈は昼間のことなんてなかったかのような威勢で叫んできた。
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