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「なっなんだよ。なんか用か?」
内容はわかっている。しかし当一からはそれを切り出せない。
「ちょっと話があるから中央公園まで来て」
ガチャ……ツーツー……
それだけを言い残してケータイはぷつりと切れた。
返事をする間もなく切られたから行かない訳もいけない。
少し考えてから当一は中央公園に行くことにした。
こうなればはっきり言うしかないわけだ。『俺は誰にも言わないから安心しろ』と。
寝巻きだった当一は上に軽くシャツを羽織って外に出た。山沿いは夜になると少し冷え込む。それが6月だとしても。
公園につくとそこには加奈がいた。ベンチに座っているのが見える。
この公園からは町が眺めることができる。町の灯りがこちらまで届いているから若干明るい。
人なんてめったに通らないから話をするには絶好の場所だ。
「よっよう。待たせたな」
なるべく普段の感じで接してみるが少々ぎこちない。
当一が来たのを確認した加奈は立ち上がった。
「話があるの」
(そりゃわかってるよ。そのために呼び出したんだろ?)
心の中で突っ込みを入れながら加奈の言葉に返答した。
「話ってなんだ?」
こちらから話してもモメルだけだと思った当一は聞き手に回ることにした。
「昼間の神社のことなんだけど…」
加奈は胸元で手をモジモジさしている。それは好きな男子に告白する女子のような感じであった。
「あ~あれね。あれがどうかしたか?」
あくまで平然を装ってはいるが内心は落ち着いていない。
「あのこと誰かに言った?」
(言えるわけねぇだろ。幼馴染みがコスプレしてましたなんて口が裂けても言えねぇよ)
「いや…誰にも言ってない。だっ大丈夫だ。人の趣味を言いふらすような真似はしないから」
聞き手に回るつもりだったのに、つい言葉が先走ってしまった。
「ちょっと! なに勘違いしてんのよ! 趣味でやってるんじゃないわよ。ぶっ飛ばすわよ!」
加奈の趣味じゃない宣言に当一は混乱してしまった。趣味以外にあんな格好をする人はいるものかと思いつつ加奈の様子を伺っていた。
ものすごい形相でにらみつけてくる幼馴染みに当一は一歩後ずさりしてしまう。
「はぁ~。今から言うこと最後まで聞いてよね」
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