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ニヤニヤしながら言ってきた金城に少し腹が立っている当一である。
確かに今の言い方じゃあ勘違いもされる。
しかしそうではない。数少ないバカな友人を気遣って忠告しているのである。
「お前は加奈の事を何にもわかってないな」
頬杖を付いた状態から体制を立て直して腕を組んだ。今から親父の説教でも始まるような姿勢である。
「何でだよ? 清楚で優しくて頭もいいじゃないか。それに美少女だし」
前の席に座っていた金城は当一の机に体を乗り上げた。金城の無垢な瞳が当一の精神にぐさりと刺さる。
しかし加奈の本性はそんな良いものじゃない。普段の性格は清楚とはとてもいいがたい。当一に対してはかなり口が悪いらしい。
幼馴染みの特権と言えば聞こえはいいがこの場合は最悪だ。
学校で見せているのは普段の加奈ではなくキャラを作りまくってる。だから学校では当一は加奈に近寄りにくいのだ。当一が話しかけようものならすごい形相で睨み付けてくる。
「どうしたの当一くん? 私に何かようかしら?」
そんな優しい言葉をかけてくれるが目は『ようがねぇなら消えろや』みたいな目である。
だからなるべく学校や友達の前では加奈に近寄らないようにしている。
確かに見たくれは美人だ。と言うよりは美少女が妥当であろうか。当一にとって学校で加奈に関わると良いことなんてない。当一のの心情は友人に傷ついて欲しくないという訳だ。
しかし加奈の事を悪く言ってバレたりしたらきっと殺されてしまう。当一だって命が惜しいしそれに加奈の事は嫌いじゃあない。だから今まで幼馴染みとして付き合ってこれた。
「まぁとにかく加奈はやめとけ。ってかお前じゃ無理だよ」
そんな曖昧な事を言ってその場を流すことにした。
「まぁ確かにそうだな」
金城も納得してくれたようだ。また一人不幸に向かう青年を救った。当一は大きなため息を吐いて安心した。
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