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「げっ! なっなによ、別に何もしてないわよ。あんたこそなにやってんのよ」
すごく分かりやすい動揺である。人には言えない秘密でもあるかのように。
「今から商店街行くんだよ。ほらこの道って近道だろ。お前も買い物か?」
(知られたくないこともあるんだろうな) などと思いながらとりあえず今回はスルーしとくことにした。
「えっ! そっそう、買い物よ近道だしね。ははは」
今思いついたようなセリフを言っている。目は泳いでおり額からは汗がにじみ出ている。
「じゃあ私行くから」
加奈は逃げ出すようにその場を立ち去ってしまった。
嘘をつくのが本当に下手なのだろう。当一は昔から性格を知っている。学校では嘘で塗り固めてるようだが。
買い物を済ませた当一は寄り道しながら家に帰った。周りはもうすっかり暗くなってしまっている。
町は明るいが家に近づくほど街灯が少なくなってくる。
当一は早く帰るためにあの近道を通ることにした。夜も更けてあたりは真っ暗だ。
慣れてるからとはいえ慎重にあれ道を登っていく。異変に気づいたのはすぐだった。
「あれぇ。いつもより明るいなぁ。街灯でも付けたのか?」
街灯でも付けたのかってのは冗談だが本当に街灯を点けたくらい明るかった。
その明るさはまだちょっと先に行ったところから発せられてるようだ。途中チカチカと点滅を始めて次第にあたりはまた暗くなっていってしまった。
光の根源に近づくとそこにはだれかいるようだ。さっきまで明るくて急に暗くなったから全然見えない。
「誰かいるんですかぁー?」
こんなところに人がいてしかも何か光らせていたから正直かなり不安だ。声も若干震えてる。
目も慣れてきてようやく人がいることを目で認識できた。顔は見えないが女で、変わった服装だということはわかった。しかも手には長い棒のようなもの。先端に何かついているがわからない。ただデカイ斧みたいな形状だったので当一は恐怖を抱いてしまった。
すると斧を持った女性はだいぶあたふたしたんだろうか。
「でぇぁっ! 嘘っ! マジッ!」
(極端にビビりすぎだろ。こっちの方がビビってんだよ)
ここは強気に行くしかないと思い、思い切って話を聞くことにした。
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