episode1

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こんな事があって良いはずがない。  こんなに心臓はドキドキして、それに体も震えている感覚もあるのにっ!  なんで触れねぇんだよ!  イライラが募る気持ちが動揺を隠しきれず、再び辺りを見まわした。  だが、先ほどよりも鮮明な映像が視界に飛び込んでくる。  血だらけで倒れる自分に愕然とした心が拭えない。  目の前の体は生気をなくした瞳を従え、全身が痙攣を起こしていて、誰が見ても助からないと思うほどに重傷だ。 「いったい、なにが……」  それでも、この現状を信じる事ができないまま、いきり立つ気持ちを押さえきれなかった。  血液が体の底から逆流してくる感覚がある。  これは夢か、幻か。  そう思いながらも、そっと倒れた体に近付き、自らの頬に手を添えようとした。  だが、その指は、やはり生身の体をすり抜けてしまう。 「これは、本当にあたし、なのか? あたしは……死んだのか?」  誰にとも呟くが、到底その答えが返ってくるはずもない。  死後の世界なんてないと思ってきた。  でも、自分の置かれている現状が否応なく心に突き刺さってくる。  魂だけが体を離れてしまったのだと直感した。  一体、何が起こったかの記憶は曖昧だ。  でも、やっぱりこの状況からして、たぶん、死に直面している。  「……なんで、こんな事に……」
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