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こんな事があって良いはずがない。
こんなに心臓はドキドキして、それに体も震えている感覚もあるのにっ!
なんで触れねぇんだよ!
イライラが募る気持ちが動揺を隠しきれず、再び辺りを見まわした。
だが、先ほどよりも鮮明な映像が視界に飛び込んでくる。
血だらけで倒れる自分に愕然とした心が拭えない。
目の前の体は生気をなくした瞳を従え、全身が痙攣を起こしていて、誰が見ても助からないと思うほどに重傷だ。
「いったい、なにが……」
それでも、この現状を信じる事ができないまま、いきり立つ気持ちを押さえきれなかった。
血液が体の底から逆流してくる感覚がある。
これは夢か、幻か。
そう思いながらも、そっと倒れた体に近付き、自らの頬に手を添えようとした。
だが、その指は、やはり生身の体をすり抜けてしまう。
「これは、本当にあたし、なのか? あたしは……死んだのか?」
誰にとも呟くが、到底その答えが返ってくるはずもない。
死後の世界なんてないと思ってきた。
でも、自分の置かれている現状が否応なく心に突き刺さってくる。
魂だけが体を離れてしまったのだと直感した。
一体、何が起こったかの記憶は曖昧だ。
でも、やっぱりこの状況からして、たぶん、死に直面している。
「……なんで、こんな事に……」
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