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「愁(シュウ)、あたし今年こそ花火大会に行きたい!」
「無理だな。いくら良くなったといえ、まだ油断できないだろ?」
ここは病院。俺の目の前でベッドに横になってるのは妹の瀬菜(セナ)。
彼女は病弱で、病院の外に出ることは滅多にない。
だから彼女のわがままは少しでも多く聞き入れたいが、これは聞き入れるわけにはいかない。
容体が良くなったと思えばすぐにまた体調を崩す。
それを知ってる俺はいくら彼女の願いでも聞き入れることはできない。
俺は花火なんかより瀬菜の方が大切だ。
「だから来年行こうな」
俺はそう言ってほほ笑んだ。
けれど彼女の顔は曇って今にも泣き出しそうだった。
「どうして?なんで今年もダメなの?」
そんな言葉が顔から伝わって俺は胸が痛んだ。
「俺だって連れて行きたいんだ」そんな言葉が口から出そうになった。
だけど言えない。
俺が黙ってると彼女はいきなり笑顔になり
「嘘、来年は絶対行こっ?」
と言った。でもその笑顔は無理している時のものだった。
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